2014年07月02日

「夜空と川と蛍とぼくら」:このは


夕方頃訪れた夏の雷雨で地面は湿り気を帯びている。
そこらじゅうに生えている雑草が濡れていてそれがサンダルの隙間からのぞく素肌に触れると、むずがゆさとともにぐちゃぐちゃと気持ち悪い感触になっていた。それでも構わず蛍太(けいた)は走っていた。
時折振り返り繋いだ手を握り直す。
必死について来る少女の抗議の声もいつしか止んでいて、白い頬に朱が差し苦しげな呼吸をしていた。

「蛍太!」
「もう少し!」

泣きべそのような声を聞いて焦りながら蛍太は方角を間違えていないか、あらかじめつけておいた印を確認し先を急ぐ。

時は夜。
早い家なら夕飯も終わり、眠りに就くまでのゆったりとした時間を過ごしているであろう時刻。子供であればあと一時間ほどで布団へ向かう頃。
本来であれば子供の中に入る蛍太も親の帰宅が遅いのをこれ幸いと、祖父の目を盗んでこっそり家を出てきていた。
そしてあばら屋から、うとうとしていた少女を連れだし、竹林の中を蛍光色を目印に走っている。
昼間のうちにセットしておいたその数を思い出しそろそろだろうと走り抜けると、一気に視界が開け涼しい風が吹き抜けた。
ちょろちょろと流れる川の音が蒸し暑く火照った体に染み込み、心を落ち着かせる。
何度か深呼吸をしているとうるさいほどの鼓動も元に戻っていった。

「もうっ、なんなの。急に走って」

怒った少女が未だ繋がれていた手を振りほどき、蛍太を睨んでいる。

「上」

言葉と共に指で示した方角を少女は訝しげに見上げ、途端に「わぁ」と歓声を上げた。

「きれい」

思わずこぼれたという少女の溜め息に、蛍太はほっと一息つくと同じように空を見上げた。
街明かりのないせいか、蛍太の家で眺めるより星の数が多いように思える。
帯状の星の連なりが伸び、存在を示すように煌めいていた。

「昔見たときはあちこちに散らばってるだけだったよ」
「あれは天の川っていって、この時期の晴れた日にしか見られないんだ」
「天の川?」
「恋人だった織姫と彦星がひきさかれて、年に一度だけこの川を渡って会えるんだって」
「ふぅん。人間って話を作るのが好きなのね」

蛍太のかなり端折った話にとくにつっこまず、ただ頷いて少女は首を回した。

「ずっと上見てたから疲れちゃった」

そう言って川へ近寄った少女が「あ!」と短く叫んだので、蛍太も近づく。

「見て! 川にも星がある」
「それは空が映ってるんだよ」
「……?」
「鏡知ってるよね?」
「……??」

おそらくよくわかっていない少女に蛍太もなんと説明すれば伝わるのかわからず、ただ息を吐いた。

「というか、ほたるは天上に住んでたんだから天の川とか見てないの?」
「う〜ん……よくわかんない。いつも明るいから見えなかったのかも」

少女は首を傾げた。肩までそろえられた髪がふわりと揺れ、爽やかな香りが仄かに鼻をくすぐる。蛍太は思わず顔を背けた。

「けーた」

くいくい、と袖を引っ張られ仕方なく顔を向ける。
暗闇だとわかっていても、顔が赤くなっている自覚のある蛍太は見られたくなかったのに、少女は全く別の方向を見ていた。
視線の先にはゆらゆらと揺らめいて明滅する小さな光がある。

「蛍だ」
「わたし?」
「ちがうって。わかってて言ってるだろ」

けらけらと笑う少女の頭を小突くと「けーたのばーか」と拗ねて離れてしまった。
蛍太が慌てて追いかけて謝れば、まるでわかっていたかのように笑い許される。
どちらからともなく繋がれる手。もう離れないように、蛍太はぎゅっと力を込めた。

「ほたる」
「ん?」
「キレイだね」
「うん」

二人肩を並べて飛び立つ淡い光を見つめる。それは星の旅立ちのよう。
蛍太の言葉に含まれたもうひとつの意味を少女は知ることなく、そんな二人が織り成す夏のひとときを星々は見つめていた。

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posted by 白色風船 at 15:44| Comment(0) | 雪城このは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月18日

「雨露の影花」:このは


雨が降っている。
しとしとと空から零れ落ち乾いた地面に染み込んでいく雨は、周囲の音さえも吸い取って外界を遮断するカーテンとなっていた。
嬉しげに時期咲き誇る大輪の薔薇を濡らし、緑の葉は喜ぶように雫を跳ねた。
雨で顔を傾ける野薔薇たちの先に、薄紫の塊がのぞいている。枝のように太くしっかりとした茎が、重たげに揺れる花の密集玉を支えていた。花弁に見えるそれが愕だと知った時の衝撃を思い出し理仁(りひと)は苦笑した。
その頭の付け根を指で挟み上へ寄せる。それを好きだった懐かしい人を瞼の裏に思い描く。
振り返った今ではもう淡い存在となった大切な人。同じ時間を共有していた頃でさえ、届かない幻の存在に見えていた先輩は、今どうしているだろう。
将来を語ったことはない。けれどその人は多くの教員を送っている大学へと進学した。専攻は音楽だったから、顧問と同じ道を選んだのだろう。彼女らしいと思う。
目を開け、そっと紫陽花から手を離す。咲き乱れる花々を見ながら遠い記憶に想いを馳せた。

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posted by 白色風船 at 14:57| Comment(0) | 雪城このは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月02日

このはの雑記(・ω・)

こんにちは、このはです。
なんだか急に暑くなりましたね…
薔薇がいっせいに咲き始めて綺麗なんですけど、外に出たくない。
日差しが強くてすぐに日焼けしちゃいそうです(´o`;
私には弟がいるのですが、もう真っ黒ですよ…家族の中で一人だけ浮いてます(笑)

…なにを書こうか色々悩んだんですが、とにかく5月はバタバタしていて最後の週はほとんどお付き合いでした。
どこか旅行行ったわけでもないのでネタがないのです〜
……ということで、ゲームの話していいですか?

最近スマフォのアプリが豊富で楽しいですよね。
私もいつくか使わせていただいてるのですがゲームももちろんあって、その中にRPGのようなゲームがあるんです。
そのゲームさんが最近ペットレースというのを始めたようです。まあペットを競わせて賞品を狙うというものなんですが、ペットが可愛いのです。
ただのスライムだけど、一生懸命ついてこようとしたり、歩く度に頭のでっぱりがひょこひょこ動いて、しかもアイテム装備ができるのでリボンつけたりできるんです。
可愛くて仕方ありません。見る度に可愛い可愛いを連呼してしまう。
そして着飾りたいがために欲を出そうとすると課金システムですよ!
課金は無駄遣いとわかっていながら、ちょっとだけ…ちょっとだけ……

給料日前の虚しさはなんともいえません。
課金システム恐ろしい…((((;゚Д゚)))))))

そのゲームで課金はやったことないですが、やっぱりほどほどがいいと思います。

ではでは!

posted by 白色風船 at 11:00| Comment(0) | 雪城このは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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